バレーボールと体力要素の関係

フィジカルトレーニング

日頃の練習のなかで、バレーボールを上達する、もしくはケガ予防のために、腹筋や腕立て伏せ、スクワット、長距離走といったトレーニングを行っていることと思います。トレーニングにはたくさんの種類・種目があり、それぞれ身体に及ぼす効果は異なります。トレーニングは身体的能力の向上を目的にしています。ここでは身体的能力にどのような特性があるのかを知り、トレーニングの選択を効果的なものにしましょう。

身体的能力は「行動体力」と「防衛能力」があります。トレーニングに関係する「行動体力」は主に3つ分けることができ、8つの要素から構成させています。

  1. 行動を起こす能力:①筋力、②筋パワー
  2. 行動を持続する能力:③筋持久力、④全身持久力
  3. 行動を調節する能力:⑤平衡性、⑥敏捷性、⑦柔軟性、⑧協応性、巧緻性こうちせい

①「筋力=筋が収縮する能力」

腕立て伏せや腹筋、背筋などのトレーニングがイメージしやすいのではないでしょうか。これらのトレーニングによる短期的な効果は、脳から神経系への作用が高まることによって、動作の出力に参加する筋線維数が増大します。長期的な効果は、筋線維の肥大と筋線維数自体の増加による出力の増大です。

ボールを受けたり、ヒットする際に姿勢を維持するために、腹筋や背筋、胸筋、三角筋、肩甲骨周りの筋を強化する必要があります。跳躍するためには、大殿筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋、腸腰筋、足底筋群など下半身周りの強化が必要となります。

②「筋パワー=筋が収縮する力×収縮する速度」

たとえば、Aさん、Bさんは50kgの荷物を持ち上げることができます。2人の筋力は同じとなります。一方で、荷物を持ち上げるのにAさんは5秒、Bさんは10秒かかります。この場合、AさんはBさんより筋パワーが2倍あるということになります。

スパイクの球速を向上させるためには、強い力でボールをヒットする必要があります。また、より高く跳躍するためには、筋の収縮速度を向上させなければいけません。球速や跳躍の向上には、力と速度を意識したトレーニングを選ぶ必要があります。

③「筋持久力=筋が収縮し続けられる能力」

筋持久には静的と動的の2つの意味があります。たとえば、荷物を持ち続ける能力が静的筋持久力にあたります。また、荷物を繰り返し持ち上げ、下す能力を動的筋持久力にあたります。

バレーボールはボールを保持する場面が非常に少ない競技特性がありますので、繰り返し跳躍したり、レシーブ姿勢をしたりなど、動的な筋持久力が必要となります。

④「全身持久力=呼吸循環器系の能力」

筋持久力とは異なり、運動に必要な酸素を供給する機能と酸素を消費する機能の効率性のことを言います。長距離走や水泳などがイメージしやすいかと思います。

バレーボールでは筋持久力の要素が強い印象ですが、ラリーが続いた場合に息が上がったり、大会で1日通して試合するとき、全身持久力が必要となります。

⑤「平衡性=身体のバランスをとる能力」

静止姿勢や動作中において身体を任意の状態に保つことや、不安定な姿勢の状況から復帰する能力を意味します。

スパイクやブロックの空中姿勢や、セッターがネット際のボールをタッチネットせずにトスするときなど、バレーボールにおいては非常に重要な能力で、体幹の筋力強化も合わせて必要になります。

⑥「敏捷性=速く動く能力」

Agility(アジリティ)と呼ばれ、方向転換や動作の切り替え、移動の素早さの能力を意味します。さらに、Speed(スピード)、Quickness(クイックネス)を加えてSAQと呼ぶこともあり、直線的な速度や静止した状態からの動作(反応)も含まれます。

バレーボールはボールが空中にあるときに、すべての動作を行うので敏捷性は常に求められます。

⑦「柔軟性=関節の可動域の大きさ」

関節可動域は、骨、関節包、靭帯、筋、腱によって決まります。いわゆる身体の柔らかさと言われる静的柔軟性と、動作の滑らかさと言われる動的柔軟性とがあります。より力が強く、よりスピードが速くなるほど筋肉が対応できず損傷します。トレーニングによって身体的能力を向上させるほど、柔軟性を高める必要があります。一方で関節が緩い状態の選手もいます。この場合は動作による負荷を筋肉で吸収することができず、関節に負荷がかかり、可動域の制限を越える可能性があります。脱臼や捻挫、靭帯損傷のリスクがありますので、サポータやフォームの改善などによって柔軟性を適当に保つ必要があります。

バレーボールでは肩甲骨や股関節の柔軟性が高いほど、スパイクやブロック、トス、レシーブで習得できる技術が多くなります。

⑧「協応性、巧緻性=イメージどおり、精密に身体を動かす能力」

調整力(コーディネーション)と呼ぶこともあります。神経系の働きによって姿勢や動作を調整することを指し、知覚や触覚などの五感、神経の伝達、筋肉の総合的な働きを行う能力です。

バレーボールではボール、ネット、味方と自分自身の姿勢、位置を常に意識する競技なので、協応性が高いほど、正確なボールコントロール、状況判断ができます。

引用・参考文献

・公益財団法人日本バレーボール協会 :コーチングバレーボール基礎編、2017

・大阪体育大学体力トレーニング教室:体力トレーニングの理論と実際、2015

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